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「原爆投下はアメリカの責任ではなく人類の責任」というオバマの詭弁

オバマ広島訪問にみる違和感

・安倍総理の「繰り返させてはならない」の意味とは

 一方、安倍総理も日米関係に配慮し、氏の「所感」は慎重なものに終始したが、最も注目するべき点は、原爆を含む戦争の惨禍を「繰り返させてはならない」と表現したところである。「繰り返さない」ではなく、「繰り返させてはならない」という表現を使ったところが注目される。

 これは、広島原爆死没者慰霊碑に「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」と打刻されている問題と巧妙にリンクしている。この慰霊碑の文言には、建設当時、「原爆を投下した加害者はアメリカであるのに、まるで被害者が被害者に謝罪している構図はおかしい」という被爆者や世論の疑問の声が集中した。

 結果、文言が修正されることはなかったのだが、安倍総理の「繰り返させてはならない」という表現は加害者性への言及、つまりアメリカによる原爆責任への「揶揄」とも取れるものであり、画期であったように思う。

 

・謝罪と反省がないのに核廃絶などできるのか

 アメリカはこれまでの対外戦争で、露骨な戦争犯罪や侵略を繰り返してきた。とりわけ、ベトナム戦争でのソンミ村虐殺や枯葉剤の使用などの象徴的非人道的戦争犯罪について、アメリカは謝罪していない。アメリカによる露骨な介入戦争であったパナマ侵攻も、大量破壊兵器があるなどと言って実際には存在しなかった2004年のイラク侵攻も、同様に謝罪していない。

 私は、広島・長崎原爆について未来永劫アメリカに謝罪を求める気など毛頭ない。アメリカの世論が、徐々にではあるが手垢のついた「第二次大戦を早く終わらせた」という都市伝説的歴史観から、原爆の実相を直視し、否定的になっているのは事実である。

 しかし、原爆投下を自国の過ちではなく「人類」などという責任不在の単語に置き換えるのならば、真珠湾も「人類の責任である」といわなければならない。それができないのであれば、少なくとも「原爆投下は必要のないアメリカの間違った国策であった」とアメリカの最高指導者が認めない限り、アメリカは近い将来、また同じような過ちを繰り返し続けるであろう。もしトランプ氏が大統領になったら、そんな危惧はますます現実化する。

 第二次大戦の前哨戦であったスペイン内戦(1936年~1938年)で、フランコ将軍率いる反乱軍側を軍事支援したドイツは、航空義勇部隊・通称コンドル軍団によって共和国側の拠点都市・ゲルニカを盲爆し、町は焼き尽くされて多くの死傷者がでた。

 これに激怒したピカソが大作『ゲルニカ』を描いたのはあまりにも有名である。戦後、ドイツ国会(東西統一後)はコンドル軍団によるゲルニカ爆撃を公式に謝罪した。ゲルニカは現在、観光都市・平和都市として復活している。

 過去の国策の過ちについて、被害者側が謝罪や賠償を延々に求めるのは確かに、あまりにもアンフェアで未来志向ではない。しかし、たった一度たりとも自らの過ちを認めない国が、未来を語る資格があるとも思えない。日本は唯一の被爆国として、そのアメリカにNOと指摘する、道義的責任と義務を有している。

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古谷 経衡

ふるや つねひら

評論家、著述家。1982年北海道札幌市生まれ。立命館大学文学部史学科卒。インターネットと「保守」、メディア問題、アニメ評論など多岐にわたって評論、執筆活動を行っている。主な著作に、『知られざる台湾の「反韓」』(PHP研究所)、『もう、無韓心でいい』(ワック)、『反日メディアの正体』『欲望のすすめ』(小社)など。

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